本研究では、在宅医療、遠隔医療の普及に対応するため、心電図波形の階層化伝送方式に関する研究を行った。提案手法は、心電図波形の特徴点を抽出し、特徴点記述により波形全体を記録することに特長がある。特徴点抽出および特徴点による波形記述法として、本研究ではウェーブレット極大値表現とMatching Pursuitsの2つの信号展開手法を用いた。ウェーブレット極大値表現では、心電図波形の特徴を多重スケール表現により記述、特徴点の分類を行い、階層化を行った。ウェーブレット極大値表現による波形表現では、平滑化関数の二階導関数と一致するウェーブレット基底を用い、波形の変曲点を極大値として抽出した。極大値のスケール間推移により、区分点解析を行い、特徴点に基づく階層的な波形表現を実現した。また、Matching Pursuitsによる手法では、心電図の特徴点を中心とするウェーブレット基底群に分解し波形符号化を行った。また、Matching Pursuitsによる信号展開を高速実現するために、ウェーブレットフィルタバンクの利用を提案した。この Matching Pursuitsのよる波形圧縮では、1心拍あたり平均30個程度の基底数を用いて実用上問題のない波形近似が実現できることを示した。また、心電図波形全体を1/10程度の圧縮率で圧縮できることを示した。
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