メディアによって異なる要求遅延品質を各通信ごとに満たす制御を実現する、ルーチングおよび網制御アルゴリズムを実現することを目標に、本年度はアルゴリズムの提案及びその理論解析とシミュレーションを行った。 アルゴリズムとしては、次の3つの方式を提案し、検討した。 1. ゲーム理論を用いたコネクション型ネットワーク制御方式 ネットワークプレイヤー(ノード)とコネクションプレイヤー(パケット)の相対するプレイヤーを設定し、互いにmini-max原理にしたがって行動する方式を提案した。本方式によりネットワーク全体の通信品質を均質化でき、パケットの廃棄率を大幅に低減できる。計算機シミュレーションによりその有効性を確認した。 2. ネットワークに優しいパケットシェーピング方式 単位時間あたりのデータ量は多いが一定時間以内に送信が完了すればよいというリアルタイムメディアデータの特性に着目し、データを細かいパケットに分割して、パケット間の間隔をあけて送信することにより、他のトラヒックの廃棄率やノードでの待ち行列遅延を低減させる方式を提案した。本方式では、必要以上に分割を行うとパケットヘッダによりオーバーヘッドが生じるためかえって通信品質が悪化する。そのため、待ち行列遅延を最小とする最適な分割数を理論的に導出した。 3. ARQプロトコルに着目した優先制御 タイムアウト発生により再送が生じるARQを対象にして、優先制御によりそのタイムアウトを減少させることにより、再送減少により有効となった帯域を他のトラヒックに割り当てることで、優先・被優先クラス同時に通信品質を向上させる方式を提案した。さらに、2通信が1リンクを共有するモデルを用いて、理論解析を行い、両優先度クラスの通信ともにノードにおける待ち行列遅延が減少する場合が存在することを確認した。
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