本年度は、平成10年度に提案した動画像トラヒックモデルを利用した。動画像通信システムを提案し、実証実験によりその有効性を示した。提案手法では、動画像マルチキャストシステムにおけるネットワーク、エンドシステムの利用可能な資源量を考慮してそれぞれのシステム資源を配分し、割り当てられた資源量に応じて品質調整された動画像を転送する。資源配分に際しては、割当資源に対して支払うコストと得られる動画像品質によって表される利得により定義されるユーザ効用を最大化することにより、適切な資源割当を行なう。まず、理想的な環境における本システムの有効性を解析手法により明らかにし、さらに、実証実験を通して実システムにおける提案手法の有効性、および適用可能性を検討した。実験システムでは、資源予約型ネットワークとしてTTCP/ITMを、またエンドシステムにはリアルタイムOSであるHiTactixを用いることにより、システム資源の予約を可能にした。実証実験により、クライアントシステムにおける空きCPU資源量、ネットワークの空き帯域およびサーバシステムにおける空きCPU資源量を考慮した資源割当制御および動画像トラヒックモデルに基づく動画像品質調整により、効果的な資源割当が行なえることを示した。 また、現実のネットワークにおいて不用意に動画像トラヒックが流入することにより既存のデータ通信系アプリケーションの得る通信品質が極端に劣化することに着目し、ネットワークの輻輳状態に応じて動画像トラヒックの送出レートを動的に調整するレート制御手法を提案し、シミュレーションによりその有効性を示すとともに、実証実験により実システムへの適用可能性についても検討した。提案手法では、ネットワークやクライアントから得られるフィードバック情報に基づきネットワークの輻輳状態(往復遅延やデータの棄却率)を推定し、競合するデータ通信系アプリケーションの得る通信品質を予測し、動画像トラヒックモデルに基づき動画像データの送出レートを調整する。シミュレーションおよび実証実験により、提案したレート制御手法を用いることにより、データ通信系アプリケーションの通信品質を劣化させることなく、高品質な動画像通信が行なえることを示した。
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