研究概要 |
本研究は,高速パケット交換網を介した動画像通信において,アプリケーション間での遅延時間を確定的に保証する枠組を構築することを目的としている.特に本年度は,網入力部(リーキーバケット)における二つのトラヒック制御パラメータ(ρ:リークレート,σ:バケットサイズ)の設定方法を確立することを主眼とし,呼受付制御への応用を試みた.動画像圧縮方式には,今後,主流となることが予想されるMPEG1,2を対象とした. 研究は次の手順で行った.1.MPEGソフトウェアエンコーダを用い実画像データを測定した.2.動画像トラヒック量のエンベロップ過程の計算方法を示した.3.エンベロップ過程を用い,精度と計算量のトレードオフを考慮した,エンド間遅延と必要バッファ容量に関する二つの上界式TUB(Tight Upper Bound),LUB(Loose Upper Bound)を導出した.4.シミュレーションにより上界式の精度を検証した.5.上界式を呼受付制御に応用し,受付可能領域について検討した.なお,購入した計算機は1から5の研究過程において利用し,消耗品はデータ整理に用いた. これにより次の知見を得た.1.アプリケーション間遅延時間のLUBならびにTUBはσに独立なρのみの関数となり,シミュレーション結果も同じ傾向を示した.一方,スイッチにおける必要バッファ容量はσの単調増加関数となった.このことからσは網入力部でパケットロスが生じない範囲で小さく設定すべきである.2.TUBを用いた場合,接続可能領域は遅延要求品質の全域にわたりシミュレーション結果とよく一致し,精度の高い呼受付制御を実現可能である.LUBを用いた場合,TUBに比べ接続可能領域は小さくなる.しかし,遅延に対する要求品質が極端に高いあるいは低い場合は,シミュレーション結果とよく一致し,呼受付制御に十分利用可能である.
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