研究概要 |
本研究は,多元情報通信システムの符号化に関する様々な理論的成果,未解決問題を再検討し,理論的整備を行なうとともに,実際の多端子情報通信技術への応用を目指した理論の拡張を行なうものである. 以下,本研究の本年度の研究実績の概要を述べる. 1. 複数の補助情報を伴うシステムの符号化問題: 多元情報源符号化において,複数の補助情報を伴うシステムの符号化問題は20年近い未解決問題として知られている.本研究では,ある相関条件を満たす多重ガウス情報源に対し,この問題を解決した.さらに,得られた結果と多重ガウス情報源に対する多元情報源符号化問題に関して申請者が過去に得た結果との関係を明らかにした. 2. 中継通信路を利用した秘密通信システムの安全性解析: 情報通信の大域化,多様化が地球的規模で進むに伴い,情報セキュリティ技術,即ち情報伝送に際して,盗聴者への情報の漏洩や,妨害者による情報の改ざん,置き換え,挿入等の攻撃を防ぐ技術の重要性が高まってきている. これまで様々な多元通信路の符号化に関する研究が行なわれ,符号化定理が発表されて来たが,通信伝送の安全性まで考慮した伝送システムの解析は,放送型の通信路を基盤としたものに限られていた.本研究では新たに中継通信路において,中継者が通信の補助者であると同時に盗聴者にもなり得る場合の符号化を議論し,通信システムの効率,安全性を解析した.この結果については,近々情報理論あるいは情報セキュリティに関する研究会での発表を考えている. 3. 乱数生成問題についての研究: あるランダム性をもつ系列(コイン乱数系列)を変換して,決められたランダム性を持つ系列(ターゲット乱数系列)を生成する問題を乱数生成問題という.乱数生成問題は情報セキュリティ技術と深い関係がある.実際,情報伝送における安全性を向上させるために所望の統計的性質を持つ乱数系列が有用となることは多い.本研究では,固定長のコイン乱数系列を用いて,固定長のターゲット乱数系列を近似する問題を研究し,幾つかの結果を得た.
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