本研究では、屈曲振動子周辺に生ずるエバネッセント音場が振動子の振動に非常に大きな影響を与える性質を利用した近接センサについて、その実用システムについて検討を行ってきた。本年度の研究により以下のことが明らかとなった。 1.エバネッセント音場が形成される屈曲共振モードについて、屈曲次数を変えたときの検知性能の調査を行った。その結果、屈曲振動子の端部におけるエバネッセント音場を利用した場合には、低い屈曲次数(低周波数)において感度が良くなることが示された。また、屈曲振動面全体を用いた場合には、その差異はみられなかった。 2.共振回路の閉ループに屈曲振動子を組み込み、その発振出力電圧から近接度を読み取る近接センサの実用システムを提案・制作した。この結果、ウィーンブリッジ回路を発振回路とした場合には、良好な発振電圧変化が現れることが明らかになった。これにより、莫大なコストが必要なインピーダンスアナライザによる近接検知を行わず、非常に安価な共振回路を用い、その共振出力電圧等を計測するシステムが構築された。本方式により近接センサが実用化される可能性が大きくなったと考えられる。 3.本近接センサは気体の粘性減衰を用いていることから、気圧・気種センサとしての利用の可能性を探った。この結果、気圧が減少するにしたがって、電気端のインピーダンスが下がっていくことが明らかとなった。また、共振周波数は気圧が減少するにしたがい、低下することが明らかになった。この現象については、今後の研究も期待される。
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