研究概要 |
本研究の目的は、走査型プローブ顕微鏡により観察が可能となった結晶格子を基準にして、位置決めおよび変位計測を行う手法を開発する事である。当初は走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope,以下STM)を用いる方法について検討を開始したが、現在それと併せて原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope,以下AFM)についても検討している。今年度の主な実績を以下に示す。 1. STMを用いる方法については、既に2ステップの位置決め実験に成功している従来装置の特性を評価し、ステップ数を増加するのに必要な改善を行ってきた。走査の広範囲化および高速化を目指すにあたり、原子像の微分信号を得るために探針に与える微小振動の周波数帯域を上げることを試みているが、帯域を上げるにしたがってノイズが増加し安定した制御を行うのが困難となる。当面の目標として走査速度1μm/secを考えているが、現在の実績は0.1μm/sec程度である。現装置の低ノイズ対策および広範囲走査を目指した改善を続けるが、新しい実験装置の開発を検討したい。 2. AFMを用いる方法では、接触式で複雑な制御を必要としないため比較的簡単に高速化が可能である。走査速度1μm/secまでは原子分解能で変位を計測できることを確認した。さらに速度を上げた場合、探針-試料間のスリップが大きくなり分解能が低下する。スリップしにくい探針および試料の選定およびコンブライアントが低く固有振動数の高いカンチレバーの開発が今後の課題である。
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