研究概要 |
平成10年度は,光ファイバ中で発生する前方散乱現象GAWBS(Guided acoustic-wave Brillouin scattering)の性質の中から,温度センサへの応用上,特に重要な特性,すなわち, 1. GAWBSの温度依存性 2. GAWBSの偏波依存性 の2点について理論,実験の両面から検討した. 1については,30℃から90℃の範囲で光ファイバの温度を変化させた際,GAWBSによる偏波変調で生じる複数の側波帯の周波数が,温度に対して線形に変化することを確認した.また,実験結果から,温度変化の指標には,108 MHz付近に出現する側波帯が適していることがわかった.理由は,この側波帯の周波数は,標準的な光検出器で検出できる上,変調が深く,10 kHz/℃と温度に対して充分な感度を有するためである. 一方,GAWBSによる偏波変調は,光ファイバ出射端に検光子を配置し,強度変調として観測する.2については,この強度変調と光ファイバ出射端での光の偏波状態との関係を検討した.出射端での偏波状態と検光子の透過軸を様々に変化させた実験から,任意の偏波状態に対する強度変調信号の振幅を与えるモデル式を導いた.得られた結果は,光ファイバ出射端での偏波状態を示すストークスベクトルが,ボアンカレ球上,終点近傍でランダムに変動することに対応していた. 今後は,今年度の研究成果を踏まえ,GAWBSの引っ張り歪み依存性とその温度計測への影響についての検討,偏波無依存な光学系の構築,各種形態のリモートセンシングを実現するためのシステム構成の考案を進めたい.
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