光音響顕微鏡システムによる薄膜製品の熱拡散率推定のための携帯型光音響センサーの開発を行った。得られた結果を以下に示す。 1.信号検出センサーの改良について センサーをマイクロホンから、軽量で加工性に富むPVDF膜に変更した。PVDFの膜厚が厚い方が検出信号が大きくなることを理論的にも実験的にも明らかにし、膜厚は110μmを使用することにした。また、PVDF膜は柔軟なために膜の歪みによる信号の変化が生ずる問題点があり、これを解決するためにアクリル基板にPVDF膜をエポキシ系接着剤で張り付ける方法を考案した。さらに、PVDF膜で観測される信号を解析するためのモデルを確立することができた。提案したモデルでは、実験に使用する周波数が低いためPVDF膜の圧電効果を無視し焦電効果だけを考慮した。また、センサー部は試料-空気-電極-PVDF膜-電極-エポキシ-アクリルの7層構造であるが、実験条件から試料-空気-PVDF膜の3層構造に近似できることを示した。 また、微弱な信号を検出するためのPVDF膜との電気的なマッチングを考慮した増幅器を作成した。 2.レーザダイオード光源への改良について 光源をガスレーザからレーザダイオードに変更し、光音響信号を測定できることを実験的に明らかにした。 3.光源一体型センサーの開発について レーザダイオードとPVDF膜を一体化した新しいセンサーを考案し、黒鉛試料の光音響信号が測定できること明らかにした。しかし、薄膜製品への適応までには至らず、今後検討が必要である。
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