研究概要 |
原子力プラントの緊急時における制御のように,大規模システムの実時間制御に対する要求がある.このような場合,システムの状態に柔軟に対応できるようより知的な状態フィードバック制御を行う必要がある. これまでに提案されている離散事象システムの状態フィードバック制御方法としては大きく分けて二つある.一つの方法は,全状態空間を生成して,生成された状態空間を元に制御を構成する手法(以下(a)法)である.もう一方の手法は,ペトリネットの構造を利用して,制御を構成する方法(以下(b)法)である.(a)法は,対象とするシステムが大規模な場合,状態空間が膨大となるので実時間制御に用いるのは不可能である.(b)法は,構造に制限を加えたクラスのペトリネットによって表現されたシステムにしか適用することができない. 大規模な離散事象システムの状態フィードバック・実時間制御を達成するためには,まず禁止状態への到達可能性を瞬時に判断する必要がある.禁止状態への到達可能性はペトリネット理論ではマーキングへの可達性に対応づけることができる.可達性解析問題はNPに含まれることが知られている.近年のペトリネット理論における研究成果のなかには,本来NPである問題をいかにして実用上問題のない程度の時間・空間で解くかということに着目しているものがある.これらでは,アンフォールディング・BDD・頑健集合などを用いることによって,効率的に問題を解いている. 本年度は可制御可観測性が保証されている場合でのアンフォールディングを用いた可達性解析の高速化について研究を行った.これにより,分岐限定法を用いた可達性解析のための決定的アルゴリズムを提案した.ヒューリスティックアルゴリズムを用いなかったのはシステムの信頼性を損なわないようにするためである.なお,研究成果は1999年3月に雑誌に掲載される.
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