研究概要 |
近年,混合H_2/H_∞問題に代表される多目的最適制御系設計が注目されている.当初解析的に解くのが難しかったこの問題も,最近,LMI(=Linear Matrix lnequality,線形行列不等式)に基づく制御系設計の出現によって容易に解けるようになった.この問題の解は,各設計仕様毎に定まるLMIを連立させることによって求められるが,問題の凸性を崩さずに各仕様を満たすコントローラを共通のものとして定めるために,これまでのところ,LMI共通解すなわち共通のLyapunov関数でしか問題が解けていない.このため設計結果が保守的になっている.本研究の目的は,LMIに基づく多目的制御系設計において,各仕様を満たすコントローラが共通に定まることを保証しながら,問題の凸性を崩さずにLMI非共通解すなわち異なるLyapunov関数で問題を解くことである.平成10年度は,状態フィードバック混合H_2/H_∞コントローラと出力フィードバック強正実H_2コントローラについて,この問題を検討した.その結果,以下の結果を得た. 1. LMI解とコントローラの双方を,共通の,より基本的なパラメータによってパラメトライズできた. 2. 各仕様を満たすコントローラが共通に定まるために,LMI解のうち,どの部分を拘束し,どの部分を拘束しなくてもよいかを明確にした. 3. 非拘束部分の自由度を生かしながら主に二種類の設計法を提案した. (a) 二段階設計法 従来通りX=P^<-1>>0をLMI変数として選ぶ.まずLMI共通解で連立LMIを解く(第一段階).得られた解のうち,LMI解とコントローラの一部を固定すれば,残りのパラメータに関して連立LMIが非共通解で解ける.この自由度を生かして再度連立LMIを非共通解で解く(第二段階). (b) 反復計算法 従来とは異なりP=X^<-1>>0をLMI変数として選ぶ.その結果,二段階設計法で十分に生かせなかった非拘束部分の自由度がより多く生かせるようになる.代償としてLMI化にSchurの相補定理が使えなくなる.そこで,反復計算によりコントローラの導出を行う.このアルゴリズムの収束性もまた理論的に保証できた. 混合H_2/H_∞問題の二慣性系への適用例で,実際のH_2コストが,従来よりも(a)10%程度,(b)50%程度改善した.
|