研究概要 |
LMI(=Linear Matrix Inequality,線形行列不等式)に基づく多目的制御系設計では、各設計仕様毎に定まるLMIを連立させて設計が行われる。各仕様は凸であるが、連立させると凸でなくなる。従来、この非凸問題を凸化するため、問題がLMI共通解で解かれ、設計結果が保守的になっている。例えば、ロバスト安定性が過度に保証されて、過渡応答などの性能が犠牲になったりしている。 本研究の目的は、問題の凸性を崩さずに、LMI非共通解を用いて多目的制御系設計を行う新たな枠組みを構築し、これにより、LMIに基づく多目的制御系設計における、従来の保守性を低減することである。 H_2仕様を含む多目的制御系設計問題には、大きく分けて二種類の問題が存在する。 1.同時成立問題(LQG制御器が偶然他の仕様も満足する。) 2.制約付きH_2コスト最小化問題 (他の仕様を満たしながら、H_2コストを最小化する。LQG制御器は、もはや他の仕様を満足しない。) 平成11年度は、H_2/H_∞制御、領域極配置、強正実H_2制御器の設計問題について、状態フィードバック、出力フィードバックの両面から研究を行い、以下の結果を得た。 1.同時成立問題では、制御器の構造が定まる。この制御機構造に基づいて、以下の結果を得た。 (a)LMI解と制御器の双方を、共通の、より基本的なパラメータによってパラメトライズした。 (b)LMI解のうち、どの部分を拘束し、どの部分を拘束しなくてよいかを明確にした。 (c)非拘束部分の自由度を生かしながら二種類の設計法-二段階設計法、多段階設計法-を提案した。 2.制約付きH_2コスト最小化問題では、もはや制御器の構造は固定されない。このとき、以下の結果を得た。 (a)平方完成によりBMI項をLMI化する方法の提案。 (b)Schurの相補定理が適用できない準負定二次項をLMI化する方法の考案。 (c)準負定二次項の逐次LMI化と反復計算を用いた、LMI非共通解による多目的制御系設計法。 二慣性系やEuler-Bernouli梁の数値例でH_2コストに関する保守性を実際に大きく改善することができた。
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