より広いクラスの制御対象を安定化するユニバーサルコントローラの開発を目的に研究を行なっている。従来の適応制御は、パラメトリックな特性変動に対して補償器の可調節パラメータを自動的に調整するものであった。これに対して、本研究で考察しているユニバーサルコントローラは、制御対象の構造的な特性変動にも対応できる適応制御である。ここで考える構造的な特性変動とは、具体的には、制御対象の相対次数の変動である。相対次数は、制御入力から制御出力までに信号が通過する積分器の個数の最小値であり、入力から出力までの信号の遅れを表す定数である。この相対次数が分らない場合は、適応的にパラメータを調整することが格段に難しくなる。 本年度は、まず予備的な結果として、バックステッピング法という新しい適応制御手法に正実性を適用することによって、相対次数が2次の不確さを持つ範囲で任意の大きさ、すなわち、制御対象の相対次数がnまたはn+1であることが分かっている場合に制御系を安定化するユニバーサルコントローラの構成法を提案し、その安定解析を行なった。この結果は、システム制御情報学会論文誌に投稿し、第11巻6号に掲載された。 これに続いて、もう一つの注目されている適応制御手法である、高階調整法に正実性の概念を導入した場合の研究を行った。まず、理論的な解析の前に、数値シミュレーションによる解析を行い、比較的良好な結果を得ている。来年度は、さらに良好な結果を求めて、数値シミュレーションを理論的な解析を並行して進めて行きたい。
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