本年度は2年ある研究期間の1年目であるため、主として実験方法の検討を行った。 今回検討を行った実験は本研究で主として行われる予定である次の2つの実験である。 1) 腐食試験 2) 引張試験 まず、1)腐食試験についてであるが、本研究では応力を導入した状態の試験片に腐食を発生させるために応カを保持するための治具が必要である。この応力を保持するための治具として、本研究では遅れ破壊試験に用いられる鋼製円環タイプの治具を採用した。このタイプの治具の特徴としては(1)滑らかな形状であるため応力集中を極力減らすことが可能である(2)全体がばねであるかのように挙動するため、温度変化等に対してより柔軟に対応できると期待できる(3)鋼管から容易に製作できるため製作コストを低減できる、の3点がある。この治具を用いて腐食試験機で腐食試験を実際に行ったところ、ひずみ保持能力に関して予想以上の良好な結果を得ることができた。次に2)引張試験についてであるが、当初、本学の実験室にある万能試験機で試験を行おうとしたところ、試験片の寸法の都合により正確なデータが得られないことが明らかになった。このときの誤差は試験片のメーカーに調査を依頼してえられたデータと比較してみると、その値の5%にも達していた。このため、通常の引張試験方法による実験を断念し、高カボルトの試験等に用いられる試験方法を新たに採用することとした。近日中にこの試験方法による確認実験を行い、データの正確さの確認を行った上で本実験にかかる予定である。 また、本研究のもうひとつの主な実験である疲労試験に関しては、今回、てこを利用した試験方法を開発、近日中に実験を開始できるところまできている。さらには研究代表者が過去に行った腐食実験のデータも今回の研究の比較できるように整理を行っており、今回の研究によって得られた結果の定量的評価に結びつけることができるものと確信している。
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