研究概要 |
無限海域中に多数の円柱が等間隔に一直線上に配置された状態に規則波浪が作用すると、ある特定の周波数において、非常に大きな波力が個々の円柱に作用する現象のあることが、最近になって発見された(Maniar&Newman,J.ofFluid Mech,1998)。計算例によると、波力の増幅率は単体の円柱に作用する波力に対して、35倍にも達しており、通常の設計波力の想定を遥かに越えるものとなっている。そこで、本研究においては、その波力増幅現象のメカニズム解明のための理論的考察をおこなうことを本年度の目的とした。 基本的には、本現象は、Newmanら自身が指摘しているとおり、無限領域を含む波浪回折問題において、斉次境界条件が指定された場合の非自明解に対応するtrapped modeと深く関連していると思われた。しかしながら、当初の問題のままで理論的考察をおこなうためには、エネルギーの逸散があるため困難であり、明快な結論を導出するのは容易でない。 そこで、一定水深、一定幅を有する水路を想定し、これを横切る形で等間隔に円柱を設置した新たな問題を考え、このような問題に対してtrapped modeが存在するかどうかを調べた。その結果、境界壁においてNeumann、Dirichletいずれの境界条件を指定した場合においても、設置した円柱の数と同じmode数のtrappedmodeが存在することが数値的にも、また数学的にも示された。 当初の目的であった、波力増幅現象との関連という意味では、Dirichlet境界条件を水路壁上で指定した場合の第N-1次trapped modeと極めて強い関連性があることが示された。工学的意義としては、本研究により、波力増幅現象のおこる周波数の精度良い予測が可能になったといえる。
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