本年度は、曲げせん断破壊型の挙動をとらえるため、中空断面RC橋脚模型を用いて正負交番載荷実験を行った。解析的検討としては曲げ解析であるファイバーモデル解析手法を用いた部材解析システムを開発し、実験結果との比較検討を行った。また従来行われている地震荷重推定法に関する文献調査を行った。本研究で得られた主な知見は次の通りである。 ● 曲げせん断破壊を呈したRC橋脚模型実験結果について、その変形量を曲げ・せん断成分へと分離し、載荷ステップにおける各変形成分の推移について検討を行った。その結果、曲げ変形は繰り返し回数が増えても振幅が同じであればそれほど増えないのに対して、せん断変形は繰り返し回数とともに増大していくことなどが明らかとなった。 ● 分離した曲げ変形成分を入力波形としてファイバーモデル部材解析を行った結果、ほぼ実験結果と同様の履歴形状を表すことができる。ただし実験結果によると、せん断変形が全体変形に対して占める割合は大きい。すわなち、全体変形を追跡するためには、曲げだけではなくせん断変形も考慮できる解析手法を用いなければならない。 ● 載荷波形として漸増型および漸減型を用いた実験により、兵庫県南部地震のように大きな変位応答が地震開始すぐに生じる場合には、徐々に振幅が増大する場合に比べて曲げせん断破壊を呈しやすいことが明らかとなった。 ● 実験では基部における鉄筋の引き抜けによる変形成分が大きい。実際の被災橋脚についても引き抜けの影響は無視できないものと考えられるため、繰り返しの影響を含む引き抜け挙動を解析的に表現する手法が必要となる。
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