研究概要 |
本研究は,モウソウチクの節構造の仕組みから円筒系構造物の耐荷力性能を解き明かすことを目的としている。本年度の調査・研究の概要を以下のとおり報告する。 1.構造物の最適化手法に関する動向調査 構造物の耐荷力補強法や最適設計思想の現状と研究動向を文献,シンポジウムおよびインターネットを活用し,遺伝的アルゴリズム手法(GA)や人工生命技法(AL)などの最新の最適設計手法に関する調査を行なった。 2.モウソウチクの植生調査 モウソウチクの植生を知るために,実際に竹林の現場で若竹の成長観察,モウソウチクの節間長と直径の分布などの形状調査,真かん部の維管束分布観察を行なって,竹の形状データの採集を行なった。この植生調査から節単位の断面積,体積,断面係数,断面二次モーメント,ねじり剛性等について材料定数以外の形態から得られる力学的諸量を算出した。節高さに対する断面変化および節間隔変化など節に関する諸量についても調査を行なった。また,真かん部の一部をサンプリングし維管束の分布を画像読取スキャナーを用いて観察を行なった。この真かん部を厚さ方向にスライスし,このときの維管束の分布密度をその画像をもとに測定した。特に,材料実験と平行にこの維管束鞘の分布密度に対する強度と弾性係数についても調査を行なった。 3.モウソウチクの強度実験の実施 生体(モウソウチク)の強度特性を知るために,予備実験と各種の材料強度試験を行なった。材料引張試験では,真かん部を短冊状にスライスし維管束鞘の分布密度を測定した後,応力-ひずみ曲線,弾性係数および引張破壊応力を得た。この結果,維管束鞘の分布密度と引張強度の間に密接な関係があることが分かった。このことは円筒系構造の最適材料配置を考える上で貴重なデータを与えてくれるものと思われる。このほか,節の有無による円筒構造の圧縮試験ならびに曲げ試験を実施した。このように,モウソウチクは材料力学的強度特性と中空円筒構造が持つ幾何学的特性を併せ持つ生体構造であり,いくつかの自然の理に適った構造形態があるものと考えている。
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