研究概要 |
本研究は,地盤注入材の挙動に影響を及ぼす砂層の間隙構造の視点で,懸濁系注入材の浸透機構を究明するものである.砂質土の間隙構造の評価・表現法に関する指針を得るために,間隙部分を毛管モデルで近似する仮定に基づいた「水分法」と「空気圧入法」により求めた間隙径分布を対比した結果,次の事項が判明した. (1) 水分特性曲線から推定する水分法では,粒度分布を平行移動したような分布型をもつ間隙径分布が得られる.それに対して,飽和砂へ空気圧入したときの圧入圧力と空気透過量の関係から求める圧入法では,小さめの間隙径の部分が計測され難く、狭い間隙径範囲で頻度が高い均等な分布が得られる特徴がある. (2) 両手法の分布の差は,間隙径に対応する頻度を表す間隙体積評価の違いによるものである.水分法で評価する間隙体積は三次元的な間隙空間での含水量に相当するのに対し,圧入法では空気流に寄与する間隙径部分に相当するため,瘤状に広くなる間隙部分で空気流の澱みが生じる部分の計測が困難である. そして,懸濁系注入材(注入粒子を水で溶いたもの)を砂層へ浸透させる実験に基づき,圧入法や水分法による間隙径分布を用いて,注入材の侵入・滞留機構について検討した結果,次の事項が判明した. (3) 砂層に侵入し易く滞留し易い注入粒子の代表粒径としての85%粒径は,注入前砂層に対して圧入法により評価する注入材の流れに寄与する間隙部分の中で最小の間隙径の3〜4割程度の大きさである. (4) 上記の注入粒子径と砂層間隙径の関係のとき,流れに寄与する間隙部分で注入粒子が砂粒子表面に付着する滞留が生じ,一方で,寄与し難い間隙部分(流れの澱みが生じる部分)に粒子が蓄積する滞留が進むことが,圧入法と水分法のそれぞれで求めた注入後砂層の間隙径分布に基づいて分析された.また,このときの注入粒子の滞留量は供給した粒子量の60%程度の量であった.
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