研究概要 |
シールド設計用土水圧算定に用いられるいわゆる土水一体の概念は,土水圧挙動の不明確な粘性土地盤でのシールドトンネル掘削中および掘削後のセグメントの安全を保障するために提案されたシールド覆工設計特有の考え方である.しかし,最近のコストダウン化の趨勢も背景にあって,理論的な裏付けがなされていないこの考え方を見直し,さらにはより合理的な覆工設計の考え方を導き出そうという気運も高まっているのが事実である. そのような背景をふまえ,本研究では,1)現行土水一体の考え方の矛盾点の指摘,2)土水一体に対する理論付けの試み,3)粘性土地盤における合理的な設計用土水圧の考え方の導出,を目的として,模型実験,理論的検討を行うものである. 平成10年度得られた成果として,豊浦砂・カオリン・ベントナイトの配合比を調整して作成したオーダーの異なる3種類の透水係数を有する模型地盤において,水圧載荷・除荷実験ならびに剛体載荷・除荷実験の実験を実施し,地盤中に埋設された土圧計・間隙水圧計によって得られた土水圧挙動から,水平方向全土圧および間隙水圧挙動が透水係数によって異なること,また,同じ透水係数であっても飽和度によってそれらの挙動にも若干の差異があること,等を示した.この結果を基に,「過小間隙水圧」という新たな仮定を設けると,土水一体の考え方が非常にうまく説明できることに成功し,これにより理論的にも裏付けることができた.また,地盤物性のうち特に透水係数と飽和度に着目することによって,実験スケールでは,短期荷重(土水一体)と長期荷重(土水分離)の時間的境界を設定して設計上差し支えないことも明らかにした.具体的には,透水係数10^<-6>cm/sec以上,飽和度90%以上の粘性土あるいは中間土地盤であれば時間にして48時間程度を境にそれ以降は上水分離の考え方が適用できるという結論が得られた.
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