本年度では、福島県いわき市の海岸域を対象に、デザインの基本となる地形的特徴をマクロに把握し、磯環境モデルの空間特質を抽出することを大きな目的とした。いわき海岸を便宜上29地区に分類して考察に用いた。陸上地形をマクロに把握するため、国土地理院発行数値地図(50m)を導入し、数値地形モデル(DTM)の解析処理を行い、数値地形情報を作成した。 いわき海岸の空間構成は、縦断方向を透視形態的に見た場合、浦浜型、崖浜型、ポケットビーチ型、屏風型の4タイプに分類できた。屏風型は、前浜を持たず、海崖がジグザグに連なっており、舘海岸、塩屋崎、合磯、三崎等いわき海岸において卓越した空間構成である。これら4タイプは、地形景観の単位として海岸整備の際の単位となり、集落や聖域は、空間構成の中の河口、入浜、出兵、岬といった地形の要所に占地しており、海岸域における空間構成の特異点であり、保存の拠点とすべき場所でもある。更に、海域部分の空間構成の特異点として、福島県磯根漁場図から磯名を抽出した。 いわき海岸の空間構成のまとまりや連続性を見るために、海岸線の平面線形をマクロに捉えた結果、湾型、浦型、窪型、直線型の4タイプの空間構成パターンに分類できた。さらに、湾曲度という指標を用いて、いわき海岸(14海岸、28地点)の空間構成パターンを定量的に把握した。直線型は「弓状カーブ」の位置にあり、浦型は「弓状カーブ」から「湾入を感じさせるカーブ」への移行の範囲にあり、湾型と窪型は「湾入を感じさせるカーブ」に当たる。港湾施設や海岸保全施設設置による変遷をみると、直線型→浦型→湾型→窪型へと視線が分節されてきている。今後は、空間構成パターンや湾曲度を、いわき海岸の整備計画の指針や予測、空間設計における基本ツールとして使用するために、詳細なデータ収集が必要不可欠である。
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