研究概要 |
本研究は,これまでの数値計算手法では不可能とされていた非圧縮および圧縮性を伴う固気液混相(多相)流体場の同時解法を可能とする高精度直接数値シミュレーション手法を新たに開発し,砕波現象に代表される移動境界(相界面)を伴う複雑系の実態解明とその数理モデル化を行うものである. 今年度の研究計画は,1)非圧縮性・圧縮性流体の同時解法を可能にする2次元多相流体数値計算スキームの開発,2)PTV,PIV法による砕波時および砕波後の気液混相流体場の運動機構の解明であった.数値計算に関しては,非圧縮・圧縮性流体の特性を有する固気液3相からなる流体場に対して,各計算セルごとに局所的音速を定義し,圧力に関するポアソン方程式を高速解法(不完全コレスキー分解付き双共役勾配法)することで,多相流体場を統一的に扱うことが可能な数値スキームの開発が進展し,3次元流体場への拡張および適用(当初の計画では平成11年度のもの)も終了している,その結果,自由界面の不安定問題から砕波を伴うような複雑な移動境界問題まで幅広い応用分野に適用でき,異相間の相互作用を厳密に計算することが可能であることが分かった.また,気液界面における粘性作用は界面に対して非常に強い影響を及ぼすものと考えられ,気液界面で活発となる相互作用を検討する場合は,両相の流体場を統一的に扱うことが重要であることがわかった.また,PIVおよびPTV法による画像解析アルゴリズムおよびそのプログラミングによる水粒子自動追跡システムの開発もほぼ終了しており,砕波を伴う実流体場への適用と検証を残すのみとなっている. 現在,気液界面を通して行われる物質・熱交換量に対して,自由界面の乱れが及ぼす影響を解明するために,バロトロピ一流体としての取り扱いを修正した支配方程式系を構築中である.今後は,この枠組みを発展させ,砕波を伴う気液界面を通しての運動量,顕熱,潜熱,物質等の交換過程の厳密な力学的機構を解明し,自由界面乱流モデルの構築を図る予定である.
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