研究概要 |
主として山岳地で生起する局地的集中豪雨についてその地形条件,地表面過程が豪雨生起後の降雨の時・空間分布に与える影響を導くことによって,実時間での降雨予測のための知見を提供することを目的に以下の観測および数値実験を行った.これは研究計画の初年度として次年度の研究推進のために欠かせない基礎資料の収集と計算手法の開発という意味づけをもつ. 観測1. 6月26日〜7月12日にかけて長崎県南高来郡にて行われたGPS気象学の合同観測に参加し,GPS,地上気象測器,ラジオゾンデ,レーダーによる測地・気象観測を行った.それによって,豪雨時および静穏時に,山体にぶつかる直前の大気中の水蒸気量の鉛直分布が斜面に沿って変化する量を定量的に考察するための基礎資料を収集した. 観測2. 7月13日〜7月17日にかけて,三重県尾鷲市から奈良県に至る大台ヶ原周辺に地上気象測器を設置し,常時気象観測を行う準備をし,気象観測を行った. 観測3. 7月26日〜7月31日に滋賀県木之本町他で行われた「琵琶湖プロジェクト」に参加し,降雨時および静穏時にGPS,地上気象測器,ラジオゾンデ,ドップラーソーダーによる水文・気象観測を行った.それによって,GPS大気遅延量から境界層の発達過程を抽出する可能性を見出した. 計算1. GPS衛星から受信機に至るパスのうち,豪雨をもたらすような積雲中を通過するパスの残差データから,上空の水蒸気擾乱を抽出する基礎式系を信楽のMU観測所でのGPSデータを用いて検証した. 計算2. 詳細な雲物理過程を陽に表現した数値モデルについて,モデルを長時間ランさせることを可能とし,さらに3次元化およびその結果のグラフィック表示を行うことに成功した. 計算3. 3次元数値モデルを用いて雲の3次元的構造によって,積雲が一カ所に止まって雨を降らせる過程の構造を解析した.
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