本研究は、沿岸域の社会基盤整備が干潟の消長過程に与える影響を予測することを目的として進めてきており、本年度は、まず、沿岸域での開発が、流れや物質の流送に及ぼす影響を広域的に評価するための数値モデルを開発し、その適用性について検討した。つぎに、干潟の現地調査を実施すると共に、観測から得られた沿岸の干潟の現状と予測結果とを広域的に情報配信するシステムを構築している。 前者については、干潟の発達要因として浮遊懸濁物質に注目し、その流送過程を3次元的に評価できるモデルを開発している。このモデルを用いた解析から、締切堤が干潟に与える影響を明らかにするには、その周辺での流れの変化だけでなく、隣接する河川や海からの懸濁上粒子の流送量の変化と、締切堤周辺での化学的、生物学的な懸濁物質の生産もまた長期的な視点から評価せねばならないことを示した。また、干潟の変化をより妥当に予測するには、事前と事後だけではなく、締切堤の経年的な建設状況を考慮して物質の流送過程を評価することが必要であることも示されている。 後者については、水域の環境管理のための情報提供、住民への環境の現状を正しく理解する機会を増やすこと、などを目的として、現地観測の結果と数値モデルによって得られた結果とを広くインターネット上で提供するシステムを構築し、その一部はすでに一般へ公開している。このシステムでは、流況の把握のための画像と動画の各情報が提供されているが、一方で、公開している情報が短時間のうちに検索、表示可能なものとするようにデータ・ベースとして整備しており、2次的な利用にも対応できるように工夫されている。
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