研究概要 |
本研究の目的は2次元PTVに工夫を加えて流れの3次元速度情報を抽出する手法を確立し,それを用いて複雑乱流の特徴を明らかにしようとするものである.本年度においては以下の検討課題を設定した 1. 2色2重のカラースリット光膜を用いたPTV(以下,カラースリットPTVと呼ぶ)を開水路乱流に適用し,それらから得られる瞬時速度情報(乱れ強度,渦度等)とレーザー流速計によって計測された統計量との比較を行う. 2. カラーPTV実験において,新たにトレーサーとして蛍光染料水溶液を加え,組織構造の縦断面形象と速度情報の同時抽出を試みる. 3. カラースリットの色数を増加させ,それらによって空間場の速度情報得られるかどうかを検討する. まず検討課題1については,開水路乱流縦断面にカラースリットPTVを適用した結果横断方向乱れ強度Wrmsの分布は,レーザー流速計の結果(筆者およびNakagawa,Nezu,J.FM.80)と良好な一致を示した.また,流れ方向の渦度(ωx)分布が求められた.その分布には流れ方向にその高い値が連続して水表面方向に傾斜しながら分布する傾向が認められ,本手法で縦渦構造の縦断面を捉えていると考えられた.そのrms値は, これまで実験結果(Honkan,etal,J.FM350)および乱流の数値計算においてもっとも進んだDNS(Direct NumericalSimulation)の結果(Spalart,J.FM187)ともその分布傾向が一致している.また,本手法を開水路乱流の水表面付近の水平断面に適用した結果,鉛直方向の速度成分vが得られた.その比較的高い正・負値の領域が集団で分布し,そこは相対的に低速領域となる傾向を示した.これは水表面におけるボイル現象の内部構造を示唆しているように考えられその内部構造との相互関係の検討も今後の重要な課題と考えられる.Vrms値はLDVの計測値とほぼ対応していることも確認された. 検討課題2.については結論として十分な結果が得られていない.そこにおける問題点は,蛍光染料水溶液の緑色とカラースリット光を受けた粒子の色の分離が十分なされていないことである.本手法の蛍究染料水溶液は組織構造の断面形象を可視化する役目をもってあり,これと粒子から得られる速度によりその構造的特徴と速度情報の対応関係が考察可能となる.この色分離を可能にするために,カラースリットの色の組み合わせを数十種類変えて実験を行い,画像ソフトを用いて分離を試みた.しかし,分離に伴う粒子画像の減少が引き起こされるため,精度の低下が発生することが明らかとなった.これを解決するには,撮影時に2台のカメラを使用し,一方に緑色を強調するフィルター,他方にはそれを減ずるフィルターを付ける手段等が考えられる.このような改良を試行錯誤で検討していく必要がある. 検討課題3.については課題2.の解決とともに次年度の急務の課題として遂行する予定である.
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