本年度の研究成果は、以下の2項目に大別される。 (1)現地調査における植生活力図の有意性の検証 昨年度末に購入した葉緑素計を用いて、日立市周辺の植生活力の状態を調査した。まず複数年度(1991年、1994年および1997年)の衛星データの同一領域を対象として、正規化植生指標(NDVI:Normalized Differential Vegetation Index)、K値植生指標(KVI:K-value Vegetation Index)およびTasseld Cap変換のGI(Greenness Index)の3つの植生指標値をグラフ化した。各調査地点毎に、指標値の変動パターンと現地調査による葉緑素レベルの変動パターンを比較した。その結果、NDVIの変動傾向と現地調査結果との変動傾向が一致し、頑健な指標であることが伺えた。KVIについてはソイルライン選定の良否、GIについては係数の精密推定の必要性が伺え、今後の課題として指摘できる。 (2)多年度間にわたる植生変遷の把握 前述の現地検証結果を基にして、複数年度間の植生指標値の変動を画像化した。研究では、経年動向表示画像と定義した。この結果、日立市西部の山林において経年的に植生活力が低下している地域が発見された。経年動向表示画像と現存植生図との照合の結果、ブナやコナラ等の原生林分布地域であることが判った。遠隔計測による本結果を裏付けるため、管内営林署に電話にてヒヤリング調査を行ったが、結果を断定できる情報を得ることは出来なかった。裏付けについては今後の課題とするが、原生林の活力低下は日本全国での報告例があり、興味深い知見と考える。
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