平成10年度においては主に国際航空市場における供給者つまりエアラインの行動に焦点をあてて分析を進めた。また現在進展しているエアライン間の提携についても、その市場に及ぼす影響力が大きいことから、当研究の分析対象として含めることとした。 はじめに航空輸送産業内の行動主体を複数の地域の旅客と複数のエアラインとし、それぞれの行動規範をルート選択の効用最大化、利潤の最大化として定式化した。その際旅客の行動モデルには、自身の既往分析結果であるルート選択モデルを用いた。一方エアラインの利潤関数中の費用関数については、総費用関数としてコブダグラス型とトランスログ型の関数を推定した。その結果国際航空輸送産業には、生産に関する規模の経済が存在することが示された。このことは同時に提携に対するインセンティブが存在していることも含意するものである。 次に定期に伴うコード・シェアリング運行、コスト・シェアやネットワーク補完のような提携の効果を、収入増加と費用削減の観点から整理し、需要モデルと供給モデルを通して定量的に評価する方法を考案した。コードシェアリングの効果としては、提携両社の頻度がそれぞれの実際の運行便数よりも多いと利用者が認識する効果を需要モデルで反映させた。また提携により旅客にとって選択可能な目的地が増加する効果に関しても考察した。一方費用削減の効果としては、提携両社が提携前に就航していた都市で発生する固定的費用を共同で賄うことを考慮した。また提携による両社の旅客が増加することに伴う平均費用の逓減効果も反映させた。 そして4ノード5リンクエアライン3社の仮想市場の中で、提携によるネットワーク変化を均衡解として求め、その影響を利用者便益、各エアラインの利潤、社会的厚生水準の変化により評価した。その結果、エアライン提携は大きな外部性を有すること、また提携前のネットワーク状態により、提携の影響が大きく異なることを示した。
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