水環境中の微生物が太陽光の紫外線によりどの程度影響を受けるかを、生残数とその変化速度によって定量的に評価することを目的として検討を行った。微生物の代表として大腸菌群を用い、また、光源として低圧紫外線ランプ、蛍光灯、そして太陽光を用いて様々な照射を行った。結果から数式モデルを導き、様々な照射条件における大腸菌群数の濃度変化の予測式を構築した。 まず、低圧紫外線ランプによって発せられる紫外線によって不活化された大腸菌群の、蛍光灯の可視光による光回復の速度を調べ、その反応速度が従来言われていた1ヒット性1標的のモデルよりも、損傷の蓄積を前提とした多ヒット性1標的のモデルによってよりよく説明できることを示した。また、太陽光に大腸菌群を直接照射したときに不活化が進行することを実験的に確かめ、その不活化が紫外線による不活化と比べてゆるやかであり、核酸への直接的な作用以外の水中ラジカル等によるものであることを示した。また、下水処理水に対して紫外線消毒を行った場合に水環境中でどの程度光回復をするのか、大腸菌群に太陽光を照射する実験を行い、その濃度変化の速度が光回復と太陽光による不活化の積になることを示した。その結果を数式化して計算した結果、放流先の水環境の水深が大きくなるほど有害紫外線よりも光回復光が卓越し、濃度の増大が大きくなることを示した。 オゾン層破壊による近紫外光の増大の影響は、現在の太陽光成分の有害性が不明確であるためはっきりとした結論を得るには至らなかったが、紫外線消毒後の放流水における光回復は照射強度に応じて増大し、現在よりも光回復量が多くなることが示唆され、衛生状態が悪化する可能性が高くなると考えられる。
|