閉鎖性水域では、夏季のアオコや赤潮の発生にみられるように水質改善は必ずしも進んではいない。これは流域からの栄養塩類の発生・流出・流達過程、とりわけ降雨によって流出する非点源負荷源からの流出負荷量(ノンポイント負荷)の発生機構の解明とその定量的な把握および予測評価手法の開発が不十分である点に大きな問題がある。本研究では、晴天時・雨天時のポイント・ノンポイント負荷流入を総合的に評価し、受水域の水質汚濁機構を解明し、その管理を総合的におこなうために必要となるモデルの開発とその運用・評価を目的とする。まず、これまでの調査研究のデータ蓄積を統合し汚濁負荷発生構造と閉鎖性水域の水質汚濁機構の連携をはかるための晴天時・雨天時連続の観測調査を実施し、既存の観測データおよび本年度以降の連続観測に基づくデータベースの構築をおこない、陸上での負荷発生から水域での水質変動の時空間的な関係性を多変量解析等の手法により基礎的な解析をおこなった。次に、受水域の水質汚濁現象を表現する生態系モデル、晴雨天時の観測調査から陸域の社会・生産活動に起因する汚濁負荷の発生・伝播のメカニズムを表現する陸域からのポイント・ノンポイント負荷算定モデルの構築と統合システムの設計を進めている。また、アオコ発生に関わる生態系の物質循環および水生植物の一種であるヨシによる自然浄化作用についての既存研究事例の収集と独自の実験・観測に基づき、閉鎖性水域の生態系物質循環に各種の自然浄化機能を盛り込むためのモデル化を進めている。
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