閉鎖性水域では、夏季のアオコや赤潮の発生にみられるように水質改善は必ずしも進んではいない。これは流域からの栄養塩類の発生・流出・流達過程・とりわけ降雨によって流出する非点源負荷源からの流出負荷(ノンポイント負荷)の発生機構の解明とその定量的な把握および予測評価手法の開発が不十分である点に大きな問題がある。本研究では、晴天時・雨天時のポイント・ノンポイント負荷流入を総合的に評価し、受水域の水質汚濁機構を解明し、その管理を総合的におこなうために必要となるモデルの開発とその運用・評価を目的として実施した。まず、過去に6年間にわたり実施してきた晴天時・雨天時の湖山池流入河川および湖山池湖水水質の観測調査に基づき、陸域での負荷発生から受水域での水質変動の時空間的な関係性を多変量解析手法を援用して基礎的な解析をおこない、アオコの発生に対して影響の大きい河川および水質項目の評価をおこなった。次に、晴雨天時の陸域からのポイントおよびノンポイント発生源からの汚濁負荷の発生・流出モデルを用いて3年間の受水域への流入負荷量を算定し、それを入力とした受水域の水質汚濁現象を表現する富栄養化物質循環モデルをを構築し、3年間の湖水CODの水質再現をおこなった。以上の構築モデルに基づき、流域での下水道等施設の設備によるポイント負荷の削減代替案および雨水貯留施設を活用した雨天時ノンポイント負荷の削減代替案を組み合わせた場合の水質改善効果を評価した。その結果、標準的な負荷除去率に基づく下水道等ポイント負荷削減施策よりも雨水貯留施設を活用した雨天時ノンポイント負荷の削減施策を実施した方が水質改善効果が大きいことを明らかにした。
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