地震時に被害をもたらす地震波の複雑な挙動を解明するためには、表層地盤の動的特性を把握する必要がある。本研究では、連続体力学の理論に基づき、地盤を二相混合体でモデル化し、地震応答解析を行った。用いた基礎理論は1982年にBowenによって提案されたもので、従来から液状化解析などで構成則として用いられるBiotの理論に間隙率の構成則が付加されたものである。本研究ではBowenの理論が飽和地盤だけでなく、空気を含む不飽和地盤の理論として用いることもできることを明らかにした。 Bowenの理論は間隙の構成則が土粒子骨格と間隙水のひずみで表わされていることから、周波数-波数領域に展開すれば解析的に解くことができる。したがって、フーリエ変換によりP波特性方程式を得ると、弾性定数が周波数依存性を有することがわかる。これはBiotの理論では得られない特性である。 Bowenの理論によって不飽和地盤をモデル化し、周波数-波数領域での基本特性をBiotの理論によってモデル化した飽和地盤と比較した。特性方程式を解くことにより位相速度と減衰を表わすQ^<-1>値が得られる。低振動数領域において、位相速度は減少し、Q^<-1>値は増大する。これは低振動数領域において減衰が大きくなることを示しており、この減衰は内部減衰的ではなく構造減衰的な振舞いを示していることがわかった。 Bowenの理論を液状化解析など材料非線形問題へ拡張するために時間領域の運動方程式を再構築する必要がある。周波数-波数領域で得られた2元連立微分方程式をフーリエ逆変換によって時間領域に戻すとコンボリューション積分を含む時間領域での運動方程式を再構築することができる。このモデルを不飽和地盤モデルとして用い、数値積分により1次元地震応答解析を行った。その結果、不飽和地盤では飽和地盤に比べ地震波の増幅が抑えられることがわかった。これは周波数領域での基本特性から得られる減衰の結果とも一致している。
|