兵庫県南部地震の教訓や、国際社会への対応の必要性から、我が国では現在、より明快に目標性能を規定する設計体系を検討する方向にある。前年度は、建築構造物の構造性能の評価のために、部材レベルの性能評価方法について検討した。もう一方で、構造物の各部位に生じる地震応答変形を如何に精度よく予測できるかが一つの課題である。そこで、本年度は、多自由度系の地震応答を算出する方法として、弾塑性地震応答解析により部材の応答変形を直接算出する方法や、縮約した等価一自由度系の応答を算出し、これを多自由度系の応答に展開する方法などについて検討した。 建物階数、固有周期、設計層せん断力係数分布をパラメータとする7つのRC造梁降状型平面骨組構造物に対して、いくつかの観測地震波を用いた弾梁性地震応答解析を行い、高さ方向の地震応答変形の分布について比較した。変形分布は、(1)構造物の固有周期と入力地震動の卓越周期の関係、(2)構造物の設計耐力分布、などに大きく依存し、変形が全層に均等に分布する場合や、上層あるいは下層に変形が集中する場合など様々であった。 地震応答解析によらない骨組の地震応答変形の推定方法として、非線形漸増載荷解析の適用性について検討した。代表点の応答変位は既知であるという仮定のもとで、高さ方向の変形分布についてのみを検討した。層せん断力分布を変えた2つの漸増載荷解析によって、応答変形分布に与える不確定な要因を包括して、合理的に、地震応答変形の上限値の推定ができる。ここでは、その層せん断力係数分布として、モードの直和およびモードの差分を提案した。
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