研究概要 |
本研究は平成10年度から2カ年で行う研究であり,本年度はその1年目として次年度に行う,高齢者を被験者として用いた音声聴取実験を行う準備のため,以下の研究を行った。 1. 環境音測定システムの構築:音環境の空間的特性を捉えるために,(a)バイノーラル収音・再生システム,(b)マルチチャンネル収音・再生システム,の2つのシステムを構築し,来年度に行う実験に向けてシステムの検証と予備的な収音・再生を行った。なお,(a),(b)の2つのシステムによる収音は同時に行えるようにし,同条件の環境を収音できるように配慮した。簡易な被験者実験の結果,良好な結果が得られている。 2. 公共空間の音声伝達環境の調査:構築したシステムにより測定条件の良いホール,礼拝堂の測定を行った。 3. 収録した環境音・拡声音の分析:測定した室内音響特性,拡声設備の特性(周波数特性,時間特性)を分析し,残響時間やSpeech Transmission Index等の物理指標を算出し,室内音響及び室内音響に拡声設備が加わった音声伝送系の物理的評価を行った。 4. 被験者実験方法の検討:本年度は被験者として健聴者を用いて実験方法検討のための音声聴取実験を行った。実験方法は被験者に測定したインパルス応答をもとにシミュレートした音場において音声を提示し,カテゴリー評価法とシェッフェの一対比較法により評価させるものである。その結果を因子分析及び多次元尺度構成法により分析し,室内音響特性の他に拡声設備の周波数特性の影響が主観評価に影響を与えていることが分かった。
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