研究概要 |
本研究は,建築を建物・空調・制御というトータルなシステムで捉え,そのシステムの「設計」と「運用」という境界領域に着目しながら,省エネルギーや環境負荷軽減を効果的に推進するための空調設備設計・運用管理について,その方法論の構築と数値シミュレーションによる定量的効果の把握を目的とするものである.具体的な内容には,(1)地域性・建物用途に応じた設計用熱負荷データの整備,(2)実用的な最適化手法の提案,(3)トータルシステムに対する最適化手法の適用,(4)空調設備設計・運用管理の最適化における評価・判断基準の作成などがある.今年度は(1)(2)に重点を置いて研究を進めており,研究実績としてまとめると以下の通りとなる. 1) 設計用熱負荷データの現状と問題点をアンケート調査や文献調査により明らかにした. 2) 熱負荷計算結果を用いた設計用熱負荷データの作成方法を提示し,そのデータの追加・修正を行った. 3) 建物・空調・制御というトータルシステムにおける最適化の重要性を明らかにした. 4) これまでの最適化手法を用いて空調設備における運用管理の最適化効果を確認するとともに,その問題点および適用性の限界を把握した. 5) 実用的な最適化手法の提案に向けて,そのアイディアの獲得を目的とした情報収集を行い,その結果,遺伝的アルゴリズムと従来手法のハイブリッド型最適化手法の適用可能性を見出した. 今後の研究予定として,建物・空調・制御を包含したトータルシステムの構築を図るとともに,そのシステムに前述のハイブリッド型最適化手法を適用することによって,その手法の有用性を把握すること((3)),この実用的な最適化手法を用いて数値シミュレーションにより空調設備設計・運用管理の最適化における評価・判断基準の作成を行うこと((4))などがあげられる.
|