新築およびリフォームした住宅において、建材や内装材等から発生するホルムアルデヒド(HCHO)や揮発性有機化合物(VOC)等の化学物質が問題視されているが、実際に、室内で検出された揮発有機化合物が、建物の構成材自体から発生したものなのか、居住者の生活行為から発生したものなのかは明確ではない。そこで、使用された建材、内装材、塗装剤の資料収集が可能である住宅において揮発性有機化合物濃度の測定を行うことにより、VOCの発生源を把握することが本研究の目的である。空気質実測は、1999年夏季の5日間および秋季の一日、鹿児島市内の新築住宅二軒において行った。この二軒の住宅はO邸は機械換気システムをもつスチールハウス構造であり、M邸は機械換気設備をもたない在来木造である。夏季における入居前の実測は、内装工事が終了してから、入居までの連続した5日間にわたって行なった。その結果以下のような知見が得られた。 1)夏季実測におけるホルムアルデヒドの濃度は、機械換気がされている住宅、機械換気設備のない住宅のどちらにおいても、WHOの基準値である0.08ppmを越えていた。 2)機械換気のあるO邸では、夏季実測において、TVOC濃度が急上昇する日があったが、これは当日行われたペンキ工事の影響と考えられる。その日はトルエン、キシレン、TMB(トリメチルベンゼン)という塗料に含まれるVOC濃度が上昇していた。 3)機械換気のないM邸では夏季実測においてHCHO濃度が機械換気のされているO邸の濃度よりも高かった。また夏季実測におけるTVOC濃度も、機械換気のあるO邸でペンキ工事のあった日以外は、M邸の濃度がO邸よりも高かった。また、M邸の秋季実測において、TVOC濃度が極端に高いのは、衣装ケース内の防虫剤から発生したパラジクロロベンゼンの影響と考えられる。
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