本研究は、建築CADおよび3DCGのデータを用いた街区全表面の熱収支計算を行うシステムの開発、および赤外線放射カメラで測定した熱画像による検証システムの開発を目的としたものである。以下の2点についての成果が得られた。 1.建築CADデータから熱収支数値シミュレーションのための入力用データベースを生成するシステムの開発 建築CADに入力した建物の詳細なデータ、土地被覆データなどから、街区全表面の熱収支計算に利用可能な形式のデータフォーマットに変換するためのソフトウェアの開発を行った。まず、建物の詳細なデータの中で特に街区全表面からの顕熱流量、あるいは建築外部空間に立つ人体への熱放射を考察する上で、特に無視することのできない建物部位としてバルコニーを取り上げ、街区全表面をメッシュ分割した際の空間形状、材質(熱物性値)のデータ構造を効果的に記述するデータフォーマットを提案した。次に、実際に熱収支数値シミュレーションを行い、夏季晴天日における鉄筋コンクリート構造の建物とこれにより囲まれる空間の表面温度分布を時系列で算出することができることを確認した。 2.建築CADと赤外線放射カメラの熱画像との連携手法の構築 建築外部空間における3DCGのデータと熱画像とを、3DCGに標準に搭載されている機能を使って連携させることにより、任意の点からみた熱画像を作成する方法を提案した。まず、熱画像の収録においてできるだけ解析対象領域をカバーできる測定点を選定する方法を示した。次に、3DCGによってレンダリングして作成した画像と熱画像との幾何補正結果をもとにして、任意の点からみた熱画像を作成する方法を示した。これにより、上記1.のシステムによる表面温度分布のシミュレーション結果を、赤外線放射カメラによる熱画像を用いて検証できるシステムを構築できた。
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