東京都心部では人口の流出、コミュニティの崩壊などへの対処から都心居住の必要性が高く位置づけられ、現在までに様々な政策・計画が策定されてきた。一方で、東京都心部は一大業務集積地であり、その用途を維持していく必要性も極めて高い。そこで、本研究は東京都としての都心の位置づけ、機能のあり方を明らかにした上で、都心区の都市マスタープランの取り組みと、ミクストユースの実態について明らかにした。 まず、都レベルでは区部中心部整備指針にも示されているように、山手線内側を中心部と位置づけ、業務集積地域もあるものの、その内側を広域的に居住機能再生を目的としている。ただし、都心地域であることから、複合用途で構成されることが位置づけられている。一方、都心10区の都市計画マスタープランを見ると、特に都心部では異なる用途で構成される立体型の複合市街地像を描き、異なる整備手法を位置づけていることが明らかとなった。そこで、具体的に住商工の複合型市街地像が位置づけられている新宿区早稲田鶴巻町に着目した。ここでは沿道部分に背後の住宅地への配慮を位置づけた沿道複合市街地が囲み、中心部分が店舗・事務所などとの適切な共存を図ることを目的とした低中層住宅市街地とされている。1981年から1996年までの土地利用更新動向調査により、後背地での下駄履き型住商併用建物への更新率が高くなっていることが明らかとなった。ただし、沿道では業務系を目的とした業務系建物への更新も見られた。 しかし、居住とその他の用途との共存という観点からは、描かれた市街地像を実現するための方法は中高層住居専用地区の指定、誘導容積制度等の地区計画の適用に留まっている。これらの制度の適用により、一定階以上の居住空間の確保は可能となるが、居住アメニティの確保、望ましい複合用途の実現のためにはより詳細なガイドラインの策定とその運用の必要性があると思われる。
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