平成10年度には、平野部は、砺波平野に立地する23の在郷町について、その空間構成を把握した。すなわち、町の集落図(1/2000)を作成し、各屋敷の入口の位置、附属屋の位置を把握し、データベース化した。 平成11年度には、砺波平野という同一の地形条件のなかで同時期(17世紀)に計画された在郷町のうち、小矢部市津沢、高岡市立野、高岡市戸出大清水の三つを選び、住居・屋敷・町の実測調査を行なった。 まず、町のなかの連続する数軒について、配置図(1/500)および住宅の平面図(1/200)を作成し、標準的な屋敷構えを抽出した。砺波平野の在郷町には、入口の位置や仏壇の位置に秩序があること、そのため隣家を買い足し内部で連結して使うことができるようになっていることを把握した。また、隣地境の隙間を交互に収納として利用する相隣関係を確認した。 つぎに、在郷町の屋敷の裏側を水路とミチがとおり、日常的な移動に使われていることに注目し、町の断面図(1/200)を作成した。このミチと水路が屋敷と裏側の耕地をつなぐ役割を果たしていることを把握した。 さらに、当該地区では、獅子舞のほか、夜高(提灯行列)、山車の引き回しなど、町ごとに異なった祭礼が行われているので、その経路を把握した。また、近隣関係の区切られ方を把握した。 以上から、水路の方向性が屋敷構えや住宅平面を規定する条件になっていること、行事や近隣関係の広がり方もこの方向性を根拠としていること、さらに1軒の屋敷地は、畑と連続して単位を構成していること、が明らかになった。この砺波平野在郷町の居住特性は、計画行為とそれに対する居往者の働きかけにより生成されたものと考えられる。これを集落図、連続配置図、平面図、断面図に記述し、空間的なモデルとして示した。
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