人口10万人程度の小都市である愛知県豊川市を事例として、1989年と1997年の住宅地図において8年間の2時点比較によって算定された住宅フローの戸数を、基盤整備事業区域別に分析した。その結果、以下のことがわかった。より古い時期に施行された区画整理は、より新しい区画整理よりも多くの共同建て住宅を吸収している。戸建て住宅ではその逆の現象が起きている。つまり、古い区画整理で共同建て住宅の建設が進み、新しい区画整理では戸建て住宅の建設が進んでいる。土地改良に建設される住宅の戸数は、建て方についての違いは見られない。未整備地区に建設される住宅には、若干戸建でが多かった。 次に、住宅地図でフローの多かった先の地区へのアンケート結果の基盤整備別分析を行った。持家は719世帯に配付し、608世帯の回収を見た(回収率84.6%)。借家については、535世帯に配付し、364世帯の回収を見た(回収率68.0%)。回収できたもののうち、入居時期が1986年以降の、比較的新しい世帯に限定して分析を行った。その結果、以下のことがわかった。(1)区画整理は洪積台地で施行された。土地改良は低地・扇状地で、区画整理よりやや迅速に施行された。(2)市街化区域内土地改良に立地する新規フローの戸数は全体の2割強であり、単位面積でとりわけ多い。(3)戸建て住宅は最近20年程度の区画整理に集中立地するが、共同建て住宅はそれ以外の区画整理で分散的に立地している。(4)区画整理の持家は注文住宅中心、土地改良は建売住宅中心であった。土地改良の住宅は、通勤の点では優れており、かつ安価であるが、規模の点で区画整理に劣っている。ここに商品価値の差異化が図られている。(5)借家は区画整理でも土地改良でも、ほぼ同じ性質を持っており大きな差はない。通勤状況で持家と同様の差があったが、それはより顕著な形で見られた。
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