研究概要 |
平成10年度の研究対象は,小児病棟における病棟内の行動観察と所持品調査を中心として研究を進めた。また,複式学級での授業時間内の様子を調査し,同一空間内で複数の授業をする際の分節化,児童の落ち着きや集中度を観察した。複式学級では,学習活動に応じた空間の分節化を空間の大きさと学年との関連で捉えて整理したが,事例数が少なく次年度に自由時間も含めた調査を行いたい。 小児病棟での行動観察と所持品調査から,年齢を軸として分析を行い,生活拠点の形成とその形成過程を整理した。行動観察調査から,幼児・小学校低学年生は,病室内で過ごすよりもプレイルームやデイルームといった病室外で過ごすことが多い。逆に小学校高学年生からは病室のベッド上で過ごす時間が多くなり,中学生にもなると病室や学習室に閉じこもる傾向が強い。周辺の生活環境の影響もあるが,年齢が上がるにつれ自分のベッドを拠点として認知し行動の起点となっていることが明らかとなった。 小児病棟での所持品調査からも,多床室における自分のベッドまわりの領域の形成に,年齢や入院歴などで違いが見られた。小学校低学年は明確な領域形成がなされず,ベッドまわりに拠点は形成されていない。しかし,小学校高学年や中学生になるとベッド以外の家具,例えば床頭台や学習机,カーテンの開閉等で自分の須域を確保し始める。所持品も人に見られたくないモノと見せたい表出物品が意図的に配置されるようになっている。次年度は,この病室内におけるベッドまわりの拠点形成と,病棟内の行動須域の広がりの関連について分析を進めたい。
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