1987年と1997年の熊本市におけるランドサットTMデータから土地被覆メッシュデータを作成し、本データを3次元地形データに重ね合わせ、3次元土地被覆モデルを作成した。次に現地調査をおこない、良好な眺望景観を有する13視点場を選定し、各視点場からの景観特性とその可視エリアの土地被覆状況及び緑地の消失状況との関係を定量的に分析した。景観の特徴を記述する指標は、可視・不可視(可視エリアの抽出)、視線入射角(地表面の見えやすさ)、距離(視対象までの距離)、仰角(山の立体感)、山容の輪郭(山並みの明確さ)であり、各指標の分析結果はメッシュデータとして定量的に表現される。筆者は各指標の算出結果を総合的に判断して景観保全地域を選定した。 本研究の中間結果として以下のことが挙げらる。(1)13視点場からの可視エリアおける土地被覆状況を経年的にみると、都市中心市街地と中心部の南部の地域における緑地の消失が著しい。(2)各指標の分析結果より、以下のA〜Eの景観保全エリアが抽出できた。A:金峰山南部(中心市街地に近い山であり、距離、視線入射角、仰角の値が大きく、山肌の緑地を保全すべき最も重要な景観保全エリアである。)、B:飯田山・船野山周辺、E:甲佐岳周辺(複数の視点場から山容の輪郭が見られる。スカイラインを破壊するような造成等を防止すべきエリアである。)、C:宇土半島、D:雁回山(都市中心部より遠方であるが視線入射角が大きい。山肌の緑地を保全すべきエリアである。)なお、これらの詳細な研究成果はThe Proceedings of International Symposium on City Planning 1998、日本建築学会・情報システム技術利用シンポジウム論文集、日本建築学会大会学術講演梗概集にて発表済みである。
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