本研究は、自宅で療養状態にある高齢者や、高齢者居住施設に入居している人々が多くの場合、その状態に至る以前に培って来た様々な環境(住居、地域、人、社会等)と関わる機会を著しく減少させている事は、「生活の質」の低下につながると言う見地に立つ。研究では「環境の連続性」という視点から生活の質の向上の可能性に即いて考察を行う。10年度の研究実績は以下の通りである。 1. 情報機器を介した環境形成の可能性に関する考察(1)自力での移動が困難、施設入居等の理由により、これまでその人自身が形成して来た環境と関わる機会の著しく減少した人の環境世界の実体を、(a)自宅で公的介護サービスを受けている高齢者(文京区内)(b)特別養護老人ホーム(富山県)入居者(c)養護老人ホーム(前橋市)入居者を対象に生活環境に関するインタビューから捉え、考察を行う。インタビューでは主として健康な頃の行動環境と現在の行動環境の違いを明らかにするよう勤めた。自宅療養の人に対しては、病等を得て尚、自宅に住みつづけることの意味を探ると共に、何が住みつづけることを可能にしているのかを考察した。今回特に、自宅で一人で暮らす痴呆高齢者の環境行動を能動的な環境への働き掛けとして理解することにより自宅で暮らすことと施設で暮らすことの意味の違いをクリアに表すという新たな視点を得て、さらに研究を展開中である。(2)環境行動の現状と、記憶している地域環境の現状を捉えた後、地域の現状を示す写真や調査時に出現した場所の写真等を情報として提供することの効果を検討する。(現在進行中) (a)養護老人ホーム(前橋)(3)自力での移動困難な人にとっての環境モニタリング(住宅内、及び地域環境)の効果の検討(現在進行中) 2. 「連続的環境形成」の重要性に関する予備調査 養護老人ホーム(前橋)において前橋市外から入居して来た人々を対象にインタビュー調査を行った。
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