本研究の目的の第1は、ホスピス・緩和ケア病棟を利用する患者の病状と日常生活動作能力の経時的な変化の実態を把握し、同施設内での生活を規定する要因と、個別的な生活展開の中で重要な意味をもつ環境構成要素を整理することである。第2の目的は、患者とその家族の施設内での生活実態と、患者の病状の進行に伴う生活状況の変化を把握することである。さらに、患者のライフステージの違いによる施設環境に求める建築的な要素の差異を明らかにすることが、第3の目的である。 本年度は、特に以下の2点について重点的に研究を行った。 1) 我が国の施設整備の矢態把握 まず、我が国における緩和ケア病棟の施設整備の現状を把握するために、緩和ケア病棟の認可を受けている全施設を対象としたアンケート調査を行った。この中で、施表の運営状況や患者の生活を規定する要因などに関する質問、施設管理者の視点でとらえた病棟環境評価に関する質問を行い、それらの特徴を整理した。 2) 既往研究・先進事例の分析と調査手法の検討 既往研究の成果を把握するとともに、海外におけるホスピス・緩和ケア病棟(Palliatve Care Unit)の先進的な事例を収集し、既存の施設における環境構成要素、及びその計画手法について分析を行った。 また、緩和ケア病棟における患者とその家族の生活実態を把握することを目的とした調査手法に関する検討を行った。特定の緩和ケア病棟において、病棟内での参与観察調査の実現性や問題点等に関して、病棟スタッフへのヒアリング調査を行った。また、それらをもとに、長期的な参加親察調査を行うための予備的な調査を行った。
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