公営住宅の建替事業では、従前居住者が存在し、長期居住者とりわけ高齢者には、新たな環境への移行において、様々なストレスが生じる。そのような問題に対し、生活の継承に有効な手法として居住者参加型の計画が考えられるが、本研究では、建替手法が建替後の生活に及ぼす影響を明らかにすることで計画手法の評価を行うことを目的とする。住戸近傍は、居住者の生活が表れやすい空間であり、また、近隣コミュニティに深く関わる空間であるため、本年度は特に、住戸近隣近傍空間の使われ方に着目して分析を行った。調査対象としては、近年行われた参加型計画での建替事例として、又住戸近傍空間の特徴的な事例として、高知県営若草南団地を選定し、従前及び現在の生活に関するヒヤリング調査を行った。 考察の結果、参加型計画の有効性として、計画プロセスにおけるコミュニティの活性化が建替後のコミュニティの継承・向上に結びつくという状況が見られた。しかしながら、空間に触発された状況も数多くあり、非参加の計画であってもある程度のコミュニティの継承は可能と考えられる。但し、非接地南入りのタイプにおいて、新たな行為の発生、コミュニティの継承・向上が見られたように、空間からの誘発力、居住者の働きかけ、参加型計画の効果が重なることで、それらの相互作用により効果は増殖する可能性が指摘できる。さらには、従前の生活を深く読み込んだ計画の提案は、計画への直接的な参加、非参加の如何を問わず、環境移行においては重要であると言え、参加型の計画は、そのような読み込みにより、従前の生活を新環境に活かすことができるという点で、有効な手法となることが明らかになった。
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