本研究は、少子化社会における子育てを物的環境整備のみならず、人的ネットワーク・地域コミュニティの中で支援していく住宅・住宅地計画の基礎的な知見を得るために、近年問題視されている「育児不安」や「子育て能力の低下」現象に着目し、こうした現象が地域的にどのように発生し、偏在しているのか、また、その環境的要因は何かを明らかにすることを目的としている。 1. 久留米市(23万人・8万世帯)を対象に、平成7年国勢調査小地域集計を下に、97町丁字、3359基本単位区を分析単位として、人口・世帯数を分析した結果、少子化の著しい地域の偏在が確認された。住宅ストックの指標との相関は必ずしも明確に類型できなかったが、住宅の所有関係、世帯の居住形態などで、いくつかのパターンが見出され、地区類型が仮説的に認識できた。平成11年度は、さらにこの類型を確立し、これを下に典型地区の抽出を行い、併せて、分析対象を福岡市に展開して対比的な分析を行う予定である。 2. 保健所における小児保健事業のひとつである乳幼児定期健診を活用した育児と環境に関するアンケート調査を実施すべく準備を進めた。小児科医学、小児保健学、児童教育学、児童福祉の学際的な議論・検討から、アンケート調査票の作成を行い、家庭教育学の視点より育児不安測定尺度および、小児医学の視点より産後うつ病診断表を援用し、育児不安の定量化・尺度化を図る。平成11年度にアンケート調査を実施する予定である。 3. その他、育児支援に関する国・地方(久留米市、福岡市)の行政施策に関する資料を収集し、併せて、明治以降のわが国の近代化の過程で、取り組まれた家庭における住教育のあり方を当時の家庭教育書より考察した。
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