研究概要 |
UT_2(T=Co,Ni)は共にラーベス化合物であるが、前者が常磁性であるのに対し、後者は遍歴的な5f電子による弱い強磁性を示す。これは、3d電子との混成により5f準位がフェルミ面付近に下がるためと考えられている。磁性・非磁性の境界領域に位置するこれらの化合物は、ウラン原子間距離の変化やp電子系元素の添加に大きく左右されると期待される。これまで、ウラン化合物に第三元素として種々のプニクトゲンやカルコゲンが用いられてきたが、単体で気体元素である窒素の添加は、作製上の困難から殆ど試みられていない。我々はスパッタリング装置にアルゴシガスと窒素ガスを一定濃度で導入することにより、窒化UT_2(T=Co,Ni)アモルファス合金を作製し、その磁気的性質を調べた。a-UT_2およびa-UT_2N_2のX線回折図形ではメインピークに位置が大きく変化している。さらにa-UT_2は共にQ^-40°のメインピークに加え、Q^-28°にサブピークが観測された。これはラーベス化合物特有の4面体の頂点結合がアモルファス化しても残存していることを示唆している。一方窒素を添加した場合は典型的なアモルファスのハローパターンを示し、短範囲構造が大きく変化したと予想される。 a-UCo_2の4.2Kにおける磁化は弱いヒステリシスを示したが、その大きさは常磁性である結晶のUCo_2と同程度であった。一方、窒素を添加したa-UCo_2N_2は室温以下で強い強磁性となり、1テスラ程度で磁化は飽和を示した。非常にソフトな磁性であるため、Coによる磁性が支配的であると考えられるが、5fの寄与も否定できない。UNi_2系では窒素添加により磁化は数倍に増強されているが、a-UCo_2N_2のような強い強磁性は現れなかった。現在更に、UFe_2系への窒素添加効果も実験中である。
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