研究概要 |
本研究では窒素を添加したウラン系アモルファス合金の磁気特性、光磁気特性、伝導特性を検討した。ラーベス化合物UNi_2,UCo_2,UFe_2さらにはUFeCo,UNiCo,U_<0.27>Fe_<0.73>,U_<0.4>Fe_<0.6>をターゲットとして、アルゴン雰囲気もしくは窒素を1%含むアルゴン雰囲気中でスパッタリングし銅基板に堆積させた。得られた試料は全てアモルファス特有のハローパターンを示したが、窒素の添加の有無により第一ピークの位置が大きく変化し、U-T合金とU-T-N合金では短距離構造に大きな違いがあることが示唆された。実際、燃焼法によるガス分析により、遷移金属と同程度の原子比の窒素が添加されていることが確認された。 結晶化合物UNi_2,UCo_2,UFe_2(Tc=153K)では遷移金属の3d電子数の減少により、パウリ常磁性、5fバンド電子による弱い強磁性、3d電子による強磁性へと遷移することが報告されている。一方、アモルファス合金では何れも磁気相互作用が弱められ、a-UNi_2とa-UCo_2は共にパウリ常磁性となり、また、a-UFe_2においても低温(T<5K)のみで強磁性成分の効果が見られるだけであった。しかし、窒素添加することによりこれらアモルファス合金の磁気相互作用は顕著に増強された。とりわけa-UCo_2N_2およびa-UFeCoN_2は1300K近い高いキュリー温度を示した。また、UFe_2N_2はTc=225Kとなりウランと鉄の比が同じである結晶化合物UFe_2よりも高いキュリー温度を示した。さらに、ウランと鉄の比率を変化させたU_xFe_<1-x>N_yの磁気特性、光磁気特性、伝導特性を詳細に調べた結果、ウラン濃度が高い場合、強磁性には鉄の3d電子だけでなくウランの5f電子も部分的に寄与をしていることが明らかになった。
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