遷移金属ケイ素化物で利用される輸送特性や組織形成機構を直接支配している電子状態や化学結合状態には、多くの未解明な点が残されている。本研究では遷移金属ケイ素化物のDV-Xα分子軌道計算による結合状態の理解を元に、タイトバインディングパラメータの抽出をおこない、現実的な拡散や界面などの原子シミュレーションに必要な物性値の再現性を確認した。 結晶構造が単純なCoSi_2をターゲットとし、すでに報告されているパラメータを元により精度の高いパラメータを求めた。得られた剪断定数は、実験結果を精度よく再現していた。電子構造と内部変位パラメータからSiの周りに四面体位置にある遷移金属との間の結合は、方向性が強いことを示している。また、その他の遷移金属ダイシリサイドで報告されている結晶構造と比較したところ、実験的に得られている基底状態を正しく再現していた。
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