本研究では、酸化物ガラスの熱高電場処理過程におけるダイナミックスを解明することを目的として、第2高調波発生(SHG)法による実験と分子動力学計算を行う。前者は電場による構造変化とその構造凍結を数値的に評価するものであり、後者は構造変化をガラス中のイオンの動きと関連づけるものである。 本年度は、SHG測定装置の作製とその評価を行った。Nd:YAGレーザー、分光検出器、高電圧電源、ファンクションジェネレーター等により構成され、SHG測定部分については現有設備をそのまま利用した。今回、新たに高電圧直流電源を制御することにより試料に周期的な高電場を印加し、その応答との対応を測定できるようにシステムを構築した。制御プログラムについては、今後の実験手法の改良を考慮して汎用性があるように記述した。本装置の評価として、これまで熱ポーリング処理による研究が行われている無アルカリケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラスなどの試料について予備実験を行った結果、本装置において、1-3kV/mmの電場印加の有無に対してSHG強度の変化が検出可能であることを確認した。しかし、さらにS/N比を向上させるため、装置の光学配置および検出系の選択について検討を加える必要がある。また、交流電場を印加する手法についても、Nd:YAGレーザー強度の安定性の確保とともに技術的な確立を要する。 一方、分子動力学計算を用いたガラス構造への電場印加効果の評価については、現段階では、対象とする適切な系を選択する段階にある。四面体構造を有するガラス形成酸化物を主成分として、上記の本年度の予備実験の結果を参考に準備を進めている。 次年度においては、分子動力学シミュレーション等の結果から1軸高電場処理により誘起される構造を解析するのに有用と考えられるモデルガラス組成の試料を実際に作製し、周期的高電場処理に対する応答を評価する。
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