研究概要 |
ガラスは、本来、反転対称性を有することから、2次非線形現象である第2高調波発生(SHG)を示さないが、熱あるいは光による励起を伴った高電場処理により反転対称性を失った状態を誘起、凍結したガラスからSHGが見出されており、熱ポーリング、紫外光ポーリングなどと呼ばれる。本研究は、酸化物ガラスの熱高電場処理過程におけるイオンの動き、ガラス構造の変化、結果として生じるSHG等の現象の関連に着目し、これらの過程におけるダイナミックスを解明することを目的とした。 熱ポーリング過程の変化をSHG測定により捉えるため、Nd:YAGレーザー、分光検出器、高電圧電源、ファンクションジェネレーター等から構成される装置を構築した。高電圧直流電源を制御することにより、平板状ガラス試料に周期的な電場(V_<pp>=1-3kV,10mHz)を印加し、同時にMakerフリンジ法によるSHG測定を可能にした。YAGレーザー入射と電場方向の配置について検討した結果、電場に対して垂直な入射方向の場合に、明瞭なフリンジが周期電場に応答することを確認した。当初、市販のソーダライムガラスおよび無アルカリガラス7059(双方とも厚さ約1mm)を試料とすることにより、最適な測定の条件を設定できたが、比較的大きな非線形性が期待できるテルライト系、ビスマス系の酸化物ガラスについては、試料の加工性に問題が生じ、市販ガラスと同様の条件での測定は実現できなかった。ポーリング処理したガラスの表面に微結晶が析出し、SHG活性に寄与することが報告されている。試料表面での電荷層の形成や局所的な構造変化をとらえる目的では、本研究で採用した測定手法に特に問題がないが、結晶化をはじめ不可逆な現象が関与する場合、本装置による測定時間、シグナル強度などに再検討を必要とすることが指摘された。
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