n型酸化物である酸化チタン薄膜を、ゾル-ゲルディップコーティング法を用いてアルコキシド前駆体溶液から成膜した。得られた酸化チタン薄膜はanatase単相多結晶薄膜であり、その結晶性は熱処理温度と共に向上し、600-700℃で飽和した。原子間力顕微鏡観察より酸化チタン結晶の平均粒径は100nm程度であると見積もられた。 併せて、水溶性高分子ポリエチレングリコールを含有した溶液からマクロスケールの細孔を有した多孔質酸化チタン薄膜の作製を行った。薄膜の成膜条件を厳密に制御して再現性を高めることで、成膜湿度、溶液組成、引上速度等、種々の薄膜作製条件が薄膜の巨視的構造に及ぼす影響を初めて系統的に明らかにした。 酸化チタン薄膜の電気的特性を調べるために、購入したエレクトロメーターを用いて直流電気電導度測定を、また購入したLCRメーターを用いてインピーダンス解析を行った。その結果、酸化チタン薄膜の電気的特性は主に粒界抵抗に支配されており、その抵抗はバルク抵抗のおよそ10^3倍にも及ぶことが分かった。電気電導度を増大させるために5価イオンであるTaの添加を試みたところ、1mol%以下の添加でも格子定数の飽和が観察され、Taイオンが酸化チタン表面に偏析している可能性が示唆された。しかし、Taを添加することで、500℃において比較的応答の早い電気電導度の酸素濃度依存性が出現し、内燃機関用空燃比センサーとしての応用の可能性が示された。
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